※2025/4月の情報なので最新の情報を都度ご確認ください
はじめに
夜の奄美大島、あたりは静まり返り、耳をすませば虫の声と木々のざわめきだけ──そんな深い森の中で、思わず息をのむ瞬間がありました。
暗闇の中、ヘッドライトに浮かび上がったのは、一匹の黒くて丸い生きもの。ずんぐりとした体に短い耳。そう、それがアマミノクロウサギでした。
今回訪れたのは、奄美大島南部に位置するマングローブの森で有名な鹿児島県奄美市住用町(すみようちょう)。

実際に現地で道路の通行予約をして、アマミノクロウサギの生息地を歩き、その貴重な姿を見ることができました。この記事では、その体験をもとに、奄美市住用町の自然とクロウサギの関係について詳しくご紹介します。(参考時期/3月中旬)
アマミノクロウサギとは?
アマミノクロウサギ(Pentalagus furnessi)は、奄美大島と徳之島のみに生息する日本固有の野生ウサギで、国の天然記念物かつ絶滅危惧種に指定されています。
見た目は一般的なウサギとは異なり、短い耳・丸い体・太い前足が特徴。ピョンピョン跳ねるというよりも、ゆっくりと歩くような独特な動きをします。(意外と素早くすぐ見失う)
クロウサギは夜行性で、昼間は森の中に自ら掘った巣穴や岩陰で過ごし、夕方から活動を始めます。
その生態は非常に原始的で、「生きた化石」とも呼ばれるほど。日本の自然史を語るうえでも欠かせない存在です。

アマミノクロウサギの楽園、住用町とは?
自然が9割、森と川に囲まれた町
奄美市住用町は、奄美大島の中南部に広がる自然豊かなエリアで、町の約94%が森林に覆われていると言われています。
大きな川「住用川」が流れ、マングローブ原生林もあるなど、水と緑のコントラストが美しい町です。人口は約1,000人と少なく、自然と共に暮らすスタイルが今も色濃く残っています。
この地域は、クロウサギの生息密度が非常に高いことでも知られ、保護活動の最前線ともいえる場所です。

道路沿いには「アマミノクロウサギ注意」の看板が立ち、地域ぐるみでロードキル(交通事故死)を防ぐ取り組みも行われています。

現地で出会った、夜の森の主
今回、私はガイドなしで直接ネットから道路の夜間通行許可の予約して自主ツアーで行ってきました。
予約はこちらから [奄美大島・三太郎線の夜間利用事前予約サイト]
https://coubic.com/santaro#pageContent
東側入口と西側入口の2つの選択があります。おすすめは西側ですが同じ道なので、大きくはかわりません。
東側入口

西側入口

実際の写真は東側入口

赤く光っているのがナンバー撮影のカメラ
▶予約車両の照合のため、予約時に車両ナンバーの入力をお願いしています。予約時点で利用される車両ナンバーが不明の方は後から登録できます。予約確定メール に記載された以下のURLから車両ナンバーを登録してください。
【利用時の注意事項】
▶車同士の距離を保ち、野生動物観察の機会を増やすため、決められた入口から予約時間の前後5分以内に利用を開始してください。
▶三太郎線は全長約12㎞です。10km/h以下で走行した場合の観察時間の目安は1時間半~2時間です。(観察時間に制限はありません。)
▶三太郎線内でのUターンは混雑の原因となりますので、Uターンせずに反対側の出口まで通り抜けてください。
▶車を降りて観察する際には、他の車やハブ等に十分注意してください。
▶仮予約、無断キャンセルは他の方の迷惑になるので、絶対に行わないでください。
奄美大島・三太郎線の夜間利用事前予約サイトより
https://coubic.com/santaro/766708#pageContent
様々なルールがありますので必ず良く読んでから参加しましょう!

(注意!)現在、三太郎線にて土砂崩れが発生しています。通行の際は、十分注意して走行してください。
霧も出てきて視界も不良。倒木や岩に注意!10km以下 安全運転で!


結果からお伝えすると全部で20匹以上出会うことができました。








ふっくらとした体、しっかりした前足──まさに図鑑で見たままの姿。思わず見とれてしまう、静かで神秘的な瞬間でした。
スマホのライトでも問題ないと思いますが、より強力なライトがあると良いかもしれません。
アマミヤマシギにも出会えました

その後も、森の中ではフクロウの仲間のリュウキュウコノハズクやリュウキュウアオバズクの鳴き声や、アマミイシカワガエルの声が聞こえてきて、奄美の生態系の豊かさを肌で感じられました。
島の天気は変わりやすいので必ず天気予報や風の予報を確認しましょう
気象庁webサイト 奄美大島の天気予報
https://www.jma.go.jp/bosai/map.html#10/28.265/129.687/&contents=forecast
風予報 windy.com
https://www.windy.com/27.810/131.638?28.100,129.430,9
住用町で行われている保護活動
住用町では、1999年から環境省主導の「マングースバスターズ」という外来種駆除チームが本格始動。
クロウサギを襲うマングースの捕獲作戦が長年にわたり続けられており、その成果も徐々に現れています。
また、地域の小学校や自治会でもクロウサギの保護教育が行われており、住民の多くが“共に生きる存在”としてクロウサギを大切にしています。
こうした草の根の活動が、住用町を「クロウサギと共に生きる町」にしているのです。
他にクロウサギが観測される地域(参考情報)
今回訪れたのは住用町ですが、奄美大島内では他にも以下のエリアでクロウサギの生息が確認されています:
- 宇検村(うけんそん):湯湾岳周辺。原生林が多く、住用町と並ぶ観察スポット。
- 大和村(やまとそん):森林と人の暮らしが共存する地域で、保護活動が根強い。
- 龍郷町(たつごうちょう):里山に近い場所でも目撃例あり。
※ただし、観察には必ず地元ガイドと同行し、環境に配慮することが大切です。
https://www.town.tatsugo.lg.jp
まとめ
アマミノクロウサギとの出会いは、ただ「珍しい動物を見た」という以上の体験でした。
それは、自然の中で命と命がどう繋がっているかを、心と体で感じさせてくれる時間だったのです。
住用町は、観光地化されていないぶん、自然との距離がとても近い場所。
夜の森を歩くツアーは、まるで別世界に迷い込んだような気分になります。
もし奄美大島に行く機会があれば、ぜひ住用町で、あの黒いうさぎに会いに行ってみてください。
参考文献
環境省「アマミノクロウサギ保護増殖事業計画」2021年版
https://www.env.go.jp/nature/kisho/hogozoushoku/amaminokurousagi.html
鹿児島県奄美大島の三太郎線周辺における夜間利用ルールの試行開始について
https://www.pref.kagoshima.jp/ad13/kurashi-kankyo/kankyo/amami/santarou2.html
奄美大島・三太郎線の夜間利用事前予約サイト
https://coubic.com/santaro#pageContent
#アマミノクロウサギ #世界遺産 #Pentalagusfurnessi
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